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    『箱の中』 木原音瀬

    • 2013.03.22 Friday
    • 03:24
    木原 音瀬
    講談社
    ¥ 760
    (2012-09-14)
    コメント:箱の中 / 木原音瀬

    講談社文庫版です。
    やっっっっっと、手に入れましたー!
    店には入ってこないし、本部に補充注文しても入ってこないし、取り次ぎに注文しても入ってこないし、出版社に注文して重版待ちでやっとですよ。あーやっと読めた!
    『美しいこと』の発売に合わせて重版したみたいです。もちろん美しいことも注文中!
    学習したのでソッコー出版社に電話してやったぜ。

    木原先生はキャッスルマンゴー→リバーズエンド、の流れで興味を持ってもっと読んでみたいなと思っていた作家さんです。
    わたし、通勤電車の中では主に小説読んでるんですが、ほらBL小説って、挿絵、あるじゃないですか……
    一度、読んでたときにいい絵のあるいいシーンのページを開いたまま居眠っちゃいまして……ああ思い出すのも恥ずかしい……(°□°;)
    それ以来電車でBL小説を読むのは止めてたんで、挿絵のない講談社文庫はいいな〜と思い飛び付きました(笑)
    しかし、だいたいイラストあるページって話的にも大概盛り上がってるのに居眠るなんてなんと心掛けが悪いのだ自分は。


    【あらすじ】
    痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題作を収録した決定版。


    解説は、三浦しをんさん!!

    『箱の中』『脆弱な詐欺師』『檻の外』、三編が収録されています。

    物語は、淡々と進んでいきます。
    何度も大事件が起こるのに、登場人物たちの心は動くのに、文章は静かに流れていく。
    読んでいて、とても心地良かったです。文体が非常に簡潔で、読みやすい。
    解りやすい文章で、人間の深いところにある、本人でさえ知らなかったような感情を書き出しているので、一層心に響きます。

    解説でしをんさんが書かれていましたが、このお話の内容を乱暴に紹介すると、痴漢冤罪で服役することになってしまった主人公が、殺人犯である男に好かれて困惑する話である、と。

    この困惑する、という言葉が本当にしっくりくるな、と思いました。
    始終、堂野は戸惑っている。

    『箱の中』では、刑務所で服役中に同房だった喜多川に、小賢しい子供のような愛情とそれに伴う肉欲を思い切りぶつけられ戸惑い、考え、情を感じながらも完全に受け入れることが出来ない。
    常識など通じない、ただただ堂野を求める喜多川には、その不幸と言っていい生い立ちから想像するに執着や固執さえ感じる。
    酷い状況で乱暴に身体を奪われても堂野は、喜多川に対して情を失いはしなかった。けれど、受け入れることも出来なかった。
    刑務所という閉鎖空間の中だからだとか、男同士はおかしいだとか、言い訳じみたことを理由に、結局は自身の既成概念に囚われていただけではないのかと思う。
    それが『箱の中』。
    出所した堂野は、また外の世界での生活に戻っていく。
    成り行きまかせのように異性の恋人も出来、家庭を持つ。
    それなりに幸せに過ごしていたんだろうけれど、一年余り経っても喜多川のことを忘れていなくて、出所の迎えに行こうとも考えるほど。
    だけど、どうしても行動出来ない堂野に、弱さを見ました。
    まだ囚われているんだな、と思いました。

    次の『脆弱な詐欺師』では、異常なほど一途に堂野を捜し求める喜多川が書かれています。
    喜多川は、堂野のことを優しいと評すけれど、わたしは特別そうは感じなかった。
    ただ、真摯に向き合っていたなと思います。
    そういうところが、希薄という単語さえ当てはまらないような僅かな人間関係で育ってきた喜多川の気持ちに寄り添ったんだと。
    堂野の手掛かりを手にした喜多川のはしゃぎっぷりには思わず目を細めました。
    でも、まさかその足で訪ねていくとは……

    最後、『檻の外』。
    再会した堂野の生活に入り込んでいく喜多川。
    堂野視点なのでたくさんのことは解らないけれど、喜多川は喜多川なりに折り合いをつけて堂野と接していたんだなぁと思うと切ない。
    多くの感情を知らない喜多川にとって、相手の立場やそれに関わる人々の気持ちを慮ることは難しくて大変なことだったろうと思う。
    変わってきたように見えた喜多川の姿に、堂野も構えることなく接していけるのだと思った矢先、大事件が起こります。
    堂野にとってはとても理不尽な出来事で、堂野家は崩壊します。
    心身ともに衰弱したとき、堂野が頼ったのは喜多川で、わたしはそれをずるいなぁと思ったんですが、それをきっかけに二人の関係は進展するんです。
    家族を失くし、家族に裏切られた堂野が縋ったのが、自分を最大に求めてくる喜多川。
    当然受け入れられるし、自身を認められ必要とされ、明確に存在意義を確認出来る相手がいるというのはとても大きな安心です。
    ずるいけれど、張り詰めていたものがなくなって、堂野も楽になったんじゃないかなと思います。
    概念の檻の外で。

    それに、言い方は意地悪になってしまうけど、大義名分が出来たというか、堂野や喜多川があんまり汚れ役にならずに納まったな、と思ってしまう。
    ああいう状況になったら本人はあまり後ろ髪引かれずに気持ちを優先させることが出来るから。
    きれいにまとまったなぁと感じます。

    でも、ラストの二人はすごく幸せそうで、このままずっとこうやって過ごしていければいいのになぁ、と和みさえします。
    (しをんさんの解説を読むと不穏な雰囲気が漂ってますが)
    文庫に収められていない続編も是非読みたいです。
    きっとこんなこと言ってられなくなるんだろう……!


    本当に素晴らしかった。
    BLというより、人間の感情をきちんと書き出した、エンターテインメントでした。

    木原先生の他の著作も、もっと読んでみたい!
    『美しいこと』早く読みたい!

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